「Laughter in the Dark」絶望と希望を音楽で綴る孤高のアーティスト宇多田ヒカル。

■ミュージックコラムvol.4
ライブで味わう宇多田サウンドはカッコいいクールなテイストだった

それはまるで歌舞伎の演出のように、彼女はせりからいつの間にかステージに登場していた。スポットが当たり、最初の一音「あ」が聞こえた瞬間にもう泣けてきた。

「あなたの〜♪」

宇多田ヒカルが2018年11月6日から約12年ぶりの国内ツアーをスタートさせた。

「人間活動」を宣言し、2010年12月に開催したライブ「WILD LIFE」を終え、一時アーティスト活動休止期間に。
2016年4月、「花束を君に」「真夏の通り雨」をシングルとして配信し、アーティスト活動を再始動。同年にはアルバム『Fantôme』をリリースし、オリジナルアルバムとしては『HEART STATION』以来およそ8年半ぶり。日本語作品ながら発売時には米iTunesの総合ランキングで6位になるなどの反響がチャートに現れ、米Billboardのワールド・アルバム・チャートで初の1位を獲得した。
2017年3月にはEPICレコードジャパンにレーベルを移籍。
2018年、6月27日(水)に7枚目となるアルバム「初恋」を発表。1stアルバムから続く「オリジナル盤による1stアルバムからの連続1位獲得作品数」7作連続という快挙を起こした。
宇多田ヒカルには、常に数字がつきまとう。
なぜなら、1stアルバム『First Love』が日本の歴代1位のセールスを保持しており、これを超えるアーティストはいないとされているからだ。『First Love』は国内外総計990万枚以上を出荷。2001年にリリースされたセカンドアルバム『Distance』も国内累計約486万枚、オリジナルアルバムとしては歴代2位を記録。これは2000年代に発売されたアルバムセールス第1位となっており、いまだに破られていない。さらには、2002年発表のサードアルバム『DEEP RIVER』は約360万枚を記録。アルバムを3作連続で300万枚以上売り上げた日本のミュージシャンは彼女だけ。ギネスブックにも「日本で最もアルバムを売り上げたアーティスト」として紹介されている。さらにシングル配信の「Flavor Of Life」は総計900万以上のダウンロード記録を達成。ダウンロード数世界一の記録を持つ。また、楽曲に対しての評価は圧倒的であり、日本のシンガーソングライターの中でも群を抜いた存在であることは間違いない。音楽業界が冷え切り、CDの売り上げ低迷期でもあった時期に宇多田が復活したことで、業界ではまるで救世主でも復活したかのような扱いをしていたことは印象深かった。

見事に復活を遂げた宇多田ヒカルはデビューから20年、再び全国ツアーをスタートさせた。

絶望と希望という意味深なタイトル「Laughter in the Dark」。ステージにはドラム、ベース、ギター、キーボード、キーボード兼パーカッション兼ギターの5人。そしてストリングス8人という編成。アコースティックな音が、グイグイ胸に迫ってくる。圧巻だったのは「ともだち」と「Too Proud」でのコンテンポラリーダンスとのコラボ。ステージにいつの間にか二人だけになり、歌い踊る。「Too Proud」のラップ部分も宇多田ヒカル自身が担当。新鮮でクールな演出となっていた。これ以上はネタバレが過ぎるので割愛。
新旧のヒット曲を惜しげもなく取り入れた構成は、宇多田ヒカルの昔からのファンも新しいファンにとっても嬉しい。生で「花束を君に」が聞けたこと、「俺の彼女」では歌詞を忘れるというハプニングにも遭遇、まさにライブ感を味わえた一夜だった。
「今回のツアーでいちばんうまく歌えたかも」そんな言葉を照れくさそうにお茶目に喋る実力派シンガー。宇多田ヒカルって、本当に存在するんだとじわじわと確信させてくれた。

「愛する人と一緒にいても私は孤独、幸せに身を寄せると心がざわついて距離をおきたくなる」そんな彼女のリアルで切なくて、絶望と希望の狭間を表現する音楽の世界を、私はこれからも共鳴し、聴き続けることだろう。

Hikaru Utada Official Website
http://www.utadahikaru.jp/
宇多田ヒカルソニーミュージックサイト
http://www.sonymusic.co.jp/artist/utadahikaru/

*ちなみに宇多田ヒカルのライブでは、携帯電話での撮影に限り、フラッシュをつけたり、演出や人に迷惑をかけない範囲ならOKという外タレコンサートのような寛容さでした。

コラム JIMMY
音楽と映画をこよなく愛するカフェ店主。

関連記事一覧