あるシークレット・ソサエティ(秘密結社)の話

あるシークレット・ソサエティについての話をしたいと思う。
シークレット・ソサエティ(秘密結社)という言葉からフリーメイソンやテンプル騎士団といった団体のことを思い浮かべる人もいると思う。今回は世界規模で存在しているあるシークレット・ソサエティについて書いていきたい。

多くのシークレット・ソサエティはある方法で入団を行うが、この団体はなかなかそれが掴みづらい。
例えば、ハリー・ポッターのように、13歳の誕生日にホグワーツから入学許可証が届いて魔法使いと認識して、ある種のシークレット・ソサエティである魔法界に所属するといったことはないし、ジェダイ騎士のように、ジェダイ・マスターによって見出されてジェダイの寺院に所属するといったこともあまりきかない。受け身的にシークレット・ソサエティに所属するということももちろんあるかもしれないが、大多数は、自分で資質を見出し、シークレット・ソサエティの入り口を探し当て、門をくぐることが多い。
最近はICTの発達とともにシークレット・ソサエティ専用のアプリを秘密裏に使用してコミュニケーションに役立てたり、集会参加の情報を得る者も少なくないが、そうしたものがなかった一昔まえの平成初期では、秘密の会員制施設で交流を図ったり、秘密の書籍(現在、大部分の書籍は廃刊しており原因の多くについては不明になっている)によって情報をやり取りすることが多かったそうだ。なぜ、そこまで秘密裏にこの団体が活動をしていたのかというと、大雑把にいえば迫害を恐れているからだと言える。
このシークレット・ソサエティに所属していることを他の人に知られた場合、何らかの不利益が生じることが考えられるからだ。日本ではこのシークレット・ソサエティに所属しただけで国の法律で罰せられることは無いが、他の国ではこのシークレット・ソサエティに所属しているだけで犯罪者として扱われ、中には重罪人や死刑になる国もある。
つまり、このシークレット・ソサエティに所属するということはある一定のリスクを受け入れることを意味する場合が多く、表立ってこの団体に所属しているということを公言する人は日本でもあまりいない。
しかしながら、最近はこのシークレット・ソサエティの認識について先進国をはじめとした国々で是正することが活発になってきた。その影響もあってか、日本でもこのシークレット・ソサエティの認知向上や理解を促す施策が実施されるようになってきた。しかしながら、そうした動きに対して、シークレット・ソサエティ内で是非を問う動きもある。

シークレット・ソサエティの構成員は基本的には他の非所属の人と同様の日常生活を営んでおり、基本的には見た目でシークレット・ソサエティに所属しているかどうかを確実に判断することはできない。フリーメイソンのように何らかの印章があるものを持っていたりすることもないが、この構成員の中には比較的見分けがつきやすい人がいるのは確かであるということは報告されている。

また、このシークレット・ソサエティに所属している構成員の大部分は感覚的に他の構成員を見出すことができるということがまことしやかに囁かれている。彼らは何らかの科学的な根拠により、同じ構成員を見出すのではなく、感性と経験則から自らの仲間を雑多な人混みから見出すことに長けている。構成員は学生から会社員、政府関係者など様々な領域に存在し、日々、我々の社会に溶け込んで生活をしている人が多い。中には、公にこのシークレット・ソサエティに所属していることを表明して、それをある種のアイデンティティとしている人もいる。構成員の多くは自分で自由に使用しても良い資産が平均的な非構成員のそれよりも多い傾向にある(これには諸説あるが、このシークレット・ソサエティの構成員はそのように思っている人が多い傾向にあるようだ)。そのため、彼らが開催する集会は華美で豪勢なものになる傾向があるとも言われ、同年代の非構成員の人と比べ自由度の高い生活を送っている人が多い傾向があるとも言われている。これに目をつけた広告代理店業者は経済効果が莫大であることを公にし、市場開拓に乗り出しているが、そもそも、シークレット・ソサエティであることが影響してかうまくいっていないようである。

このシークレット・ソサエティのことについて構成員たちは「組合」と呼ぶこともある。アルファベットでは「G」で表現することが多く、6色の色が象徴として使用されるがその詳細についてよく知っている人はあまりいない。また固有のエンブレムやマークなどは存在しない。
何らかの偏った思想は見られないが、彼らが多く用いるキーワードとしては「多様性」「個性」「自分らしさ」などがある。暴力的な行為については否定的な姿勢を貫いている傾向にあるものの、軍隊などの戦闘的なものに対しては決して否定的な見方はしておらず、日本では自衛隊、警察官、レスキュー隊員といった人に対しての敬意は高い傾向にある。また、そうした人への敬意も影響してか身体を鍛えることについても重要視している構成員は多い。実際に身体を使って戦うことはさけ、言論や討論によって主張を行う人が圧倒的に多い傾向にあるのは興味深い性質であるといえる。

このシークレット・ソサエティの全貌を知っている人はほぼ皆無であり、その歴史や現在の構成員の動きなどを把握している人はほぼいないのではないかと思われる。学術的な研究も行われているがあまりにも巨大であり、公にされた情報も限られているため彼らの動きを詳細に掴むことは難しいとされている。なぜならば、彼らの活動はあまりにも多様性に富み、日々、様々な方向へ増殖しているため、それらの全貌を掴んでいくことが追いつかないからである。ちなみに、確認はとっていないが、フリーメイソンでこのシークレット・ソサエティに所属している人もいるし、テンプル騎士団でこのシークレット・ソサエティに所属している人もいる。それほどまでに巨大でかつ根深い存在であるといえる。