平成の社会について考える。「シュガー・ラッシュ オンライン」を観て

映画「シュガーラッシュ オンライン」を観てきました。ディズニーの映画です。
世界観や設定がかなり複雑というかわかりにくいものですが、言葉での説明無しで、映画の世界観を伝えていく手法については感心しました。話の内容についてはここでふれても良くないので割愛します。感想としては現代のインターネットを取り巻く世界とはいかなるものかというものをわかりやすく説明していいて、この映画をみて、子どもとインターネットとの関わり方について話し合ったりすれば大変いい教材になるなと思いました。
また、ブラックジョークもてんこ盛りで大人が観ても楽しめるようになっています。

今回は「平成という時代から新しい時代になってきた」ということを「シュガーラッシュ オンライン」をみて感じたとので書きたいと思う。

平成という時代がどのような時代だったかというと、日本のアニメーションの名言2つに象徴されているように思う。

「あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?」引用:『スラムダンク』

「逃げちゃだめだ」引用:『新世紀エヴァンゲリオン』

この2つは知らない人はいないのではないかというほど多くの人が知っている名言である。
そして、この2つが平成という時代の空気感や社会を形成してきたものを表現していると思う。

平成は簡単に言うと、日本にとって変化と混乱の下り坂であった。様々なことが崩壊し、それまで「当然」とされていたものが否定され、新たな価値が誕生するが、それに対しての抵抗と反動によって疲弊しながら「昭和的なもの」をどこかに引きずってしまったままの時代。古いものを破棄して、新しい体制へと生まれ変わるといった単純な流れではなく、ずるずると継続してしまう。「やめる」や「破棄」「選択」といったことを美徳とせず、「あきらめない」「にげない」ということを美徳としてきた。ここで「あきらめない」「にげない」という言葉がどちらも打ち消しの否定語になっていることも注目する点である。

あきらめず、やり続けることを美徳とする。逃げるといったことは決して許されない

社会に体力があるうちはまだ、その方法で良かったのかもしれないが、次第に消耗がかさなり社会にほころびが生じ始めたのがおそらく1995年あたりからなのではないか。ちょうど、1990年〜1996年に連載された「スラムダンク」はまさにその時代を象徴した作品で、そこで紡ぎ出された言葉である「あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?」時代の空気感と一致したからこそ、ここまでのものとして社会に受け入れられたのではないかと思う。

そして、1995年の10月に新世紀エヴァンゲリオンが放映される。1995年は1月に阪神淡路大震災が発生し、3月に地下鉄サリン事件が起こる。まさに平成始まって以来の混乱した年であったといえる。こうした混乱期、非常事態であったとしても、「逃げてはいけない」ということを美徳として貫くことが社会的に求められた時代であったのではないだろうかと思う。

結果よりもそこに到達する過程が重視された時代として見ることもできるかもしれない。「よりよい成果」を追求するのではなく、思考停止のなかで「みんなで諦めずにやること」、「誰一人かけることなく逃げずにやること」が求められる時代だった。
多様性ではなく、均質性が注目され、みんなが平等であるということに重点が置かれた。そして、それを満たさないものは排除し「見えなくする」という社会であったように思える。そこに存在はあるが「みえない」のである。すなわち「みえない」ふりをする社会であった。それがその当時の「当然」でだった。

こうした社会について敏感に違和感を感じ、抵抗した人は少なからずいた。
そして、現在、注目されている人、輝いている人はその時代の抵抗者だったのではないかと推察している。
平成を代表する歌姫の安室奈美恵さんはその中の一人だったのではないかと思っている。彼女は一時期、活動が停滞してしまう、思うようにうまくいかなかった時期があった。その時期を打開するきっかけとなったのが、「みんなが思っている『安室奈美恵』というものがどうなのか、ということを考えることをやめて、自分がやりたいことをやりだした」ことであったそうだ。つまり、彼女はそれまで社会が想像していた『安室奈美恵』になることをやめたのである。それはいままでの存在としてありつづけることを諦めた、疲弊して逃げたのかもしれない。しかし、その当時の「安室奈美恵」をやり続けることを辞めたからこそ、新たなステージに進むことができ、輝き続けることができたのかもしれない。

平成の前期では「あきらめること」や「逃げる」ことはマイナスのもの、許されないことであった。この状況に変化をもたらしたのが2011年の東日本大震災であった。津波や原発といった被害は人間の力を凌駕したものであり、みんなが諦めなければなんとかるようなものではなく、「『逃げる』という選択をしなければなにもはじまらないこともある」ということを学んだ出来事であった。そしてもう一つがSNSの出現である。これによって個人の思いが可視化されはじめた。いままで見えなかった、もしくは「みえない」とされていたものが見えるものとなり、社会に影響を与えるようになる。それまで、多くの人にとって人生の生き方はある程度のパターンがありその中から自分の人生を選び取っていく、もしくは選ばされている状況であった。しかし、「そうではない生き方」が存在し、だれもがそれを望んで良いというという考えが多くの人の目に止まるようになった。そしてそれが、実現可能性をもったものとして存在しているということがSNSによって拡散されるようになってきた。「そうではない生き方」の人はそれ以前にも存在したがそれはあくまで「テレビの向こう側の人」のようなもので個人の生活と接続するものではなかった。それがSNSよって接続し、対話が可能になったことが大きい。

「シュガー・ラッシュ オンライン」の話にかえるが、主人公のヴァネロペは常に先がみえているゲームの世界ですごすことを我慢していた。というか、その世界から抜け出す方法を知らなかった。それが、インターネットとの出会いで急変する。いまいる場所から抜け出し、オンラインでつながったインターネットの世界で生きることを選択する。自分の気持に対して素直に従う。周りにどう思われるのかということを排除して。現場を放棄して違うところへ行くということは現場で我慢してやっている人によっては「逃げた」と思われるかもしれない。大切なのは、その「自分は我慢してやってる」という感情である。
平成はこの「我慢してやっている」という言葉が重要な鍵だと思う。
「みんな我慢してやっているのだから逃げずに、あきらめるな」これこそが平成という時代を映し出すマインドであったと思う。そして、それを否定しはじめたのがこの2018年という時代なのかと思う。
「我慢してやっているのはなりたい自分になるためなのか」
「みんなで我慢してやって酸欠状態に陥ってしまうことに何の価値があるのか」
「自分らしい自分を手にいれたい」
2013年に「アナと雪の女王」が大ヒットしたのはこうした社会的な変化が背景にあるのかもしれない。
しかし、「アナと雪の女王」は考え方として共感を呼びはしたが、具体的な解決方法までは提示できてはいなかった。

「シュガー・ラッシュ オンライン」も「アナと雪の女王」と同様のメッセージがある作品である。しかし、この作品はより、現実社会で具体的にに「自分らしい生き方」を手に入れるにはどうしたらよいかということにも触れている点が興味深い。

魔法も使えないし、お姫様でもない人はどうすればいいのか、この点についての答えを提示しているように思える。つまり、「インターネットにつながることであなたの可能性は様々な方向へ広がる」ということを提示している。
つまり、インターネットがパラダイム・シフトをもたらした。それはツールとして生活が変化するだけではなく、人々のものの捉え方や意識を変化させることにも影響をあたえたということである。

オンラインで生きるということが具体的に価値を持ちはじめた。もちろん、今までと同様にオフラインで生きるということも一つの価値である。大切なのは、自分がどのように生きたいのかのかについて選択の広がりと自由度が飛躍的に上がったということである。「シュガー・ラッシュ オンライン」そのことについて改めて考えさせられる作品になっている。

「シュガー・ラッシュ」(2013年公開)は、人間たちが知らないゲームの世界の“裏側”を舞台に繰り広げられるファンタジー・アドベンチャー。アーケードゲームの悪役キャラクターであるラルフが自分のゲームの中から飛び出し、ヒーローになるために奮闘。ラルフは、さまざまなゲームの世界を行き来し、そしてお菓子の国のレース・ゲーム『シュガー・ラッシュ』でヴァネロペという一人の少女に出会う。自分の境遇と同じものを感じた2人は、お互いの夢を叶えるために協力し合い、レースに挑むが、その後ゲーム世界全体を巻き込んだとんでもない事件が起こってしまう!はたしてラルフとヴァネロペはどう立ち向かっていくのか!?

最新作「シュガー・ラッシュ:オンライン」の12月21日の公開を記念して、全国無料のBSテレビ局・Dlife(ディーライフ/チャンネル番号:BS258)で「シュガー・ラッシュ」を12月16日(日)18:05から放送中。
◎Dlife:Dlife.jp
◎GYAO!:https://gyao.yahoo.co.jp/
■テレビ番組見放題アプリ「Dlife(ディーライフ)」について
・対応OS:iOS/Android
・対応言語:日本語
・価格:無料(App Store/Google Playよりダウンロード)
 App Store:http://itunes.apple.com/ja/app/id906219079
 Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.disney.apps.gm.dlife

関連記事一覧