なぜ大学にいくのか(2019年3月版)

「なぜ大学にいくのか」

この題材でコラムを書こうと思ったきっかけがある。

工業高校を卒業後に就職し、結婚、子どもがいる上司と話していて、上司から出た言葉に驚いたからだ。

「子どもには大学に行ってほしくない。高校を卒業したら働いてほしい」

この言葉は自分にとってはとても違和感のあるものだった。

そもそも、自分は大学に進学することを前提に高校進学をした背景があるのはもちろん影響している。
しかし、今の時代で大学に進学せずに高卒で就職することのメリットがあまり感じられなかったことが挙げられる。
例えば、公務員は学歴社会のため、高卒と大卒で給与も違えば出世コースも異なる。職人の仕事以外のホワイトカラーの仕事ではそもそも高卒を受け入れていない企業は多い。大学進学をしないという決断は、将来の可能性を狭めてしまうのではないかという考えが自分の中にはある。

しかしながら、上司は、高卒で就職し、約20年間も同じ企業で働き、着実に出世し給与も十分もらっている。つまり、高卒でも十分な生活ができるという自負があるので、わざわざ高いお金を払って「大学へ遊びにいく」ことはする必要はないという考えだ。

「大学へ遊びにいく」ぐらいならば働いたほうがいいという考え方はあながち間違ってはいないのかもしれない。たしかにある一定のレベル以上の大学で真剣に学ばなければ、「大学へ遊びにいった」だけでなんの成果も得られないかもしれない。目的や問題意識をもって大学で学ばなければ何一つ身につけることはできないのかもしれない。

お金を稼ぐという点について考えれば、学歴はほぼ必要ないものになってきているのかもしれない。様々なICTの発達によってお金を作る方法は多様化している。ユーチューバーがそれの良い例かもしれない。ただし。ユーチューバーという職業がいつまで続けることができるのかという点は疑問だが。

大学にいくことで得られるものとして、「新卒枠での就職」「学歴」「学術的な専門知識」などがあるがいまいちそれが、自分の将来形成にどう影響を与えるのかを具体的に想像することは難しいのではないか。

では、なんのために大学へいくのか。これから大学へ入学するすべての人の胸に刻んでほしいことがある。

それは、「大学は人脈をつくるためにいく」というものである。

「人脈」というとちょっと引いてしまう人もいるかも知れない。より具体的に言うならば、
「信頼のおける多様な友達たちを作るために大学へ行く」

異業種交流会や、朝活などの様々な交流イベントが開催され、そこで社会人たちはとりあえずの名刺交換、とりあえずのフェイスブックでのフォローといったことをしているのではないだろうか。
私も以前はそうしたことをよくしていた「意識の高い系の人」だったが、まったくもって成果がなかった。
結局そうした場に集まる人達は「欲しい欲しいと飢えている人」か、「何かを売りつけたい人」であり、信頼できる仲間を見つける場所にはなりえないということである。
つまり、社会人になると信頼できる友人を作ることはかなりしんどいことになってしまう。

信頼のおける仲間、友人を見つける最良の場こそが大学であると私は自分の経験則からいうことができる。なぜ大学なのかというと、大学ではなんらかの課題に対して取り組むことが多い。それは研究であったり、プレゼンテーションであったり、イベント運営であったりする。その中で自分が信頼できる友人を一人でも多くつくることが重要になってくる。
この、信頼できる友人(決してたくさんの友人を作る必要はないが、たくさんいたほうがいいのも事実)は大学卒業後もきっとあなたにとって、とても大切なものになると思う。そして、これは簡単にお金で買えるものではない。むしろ、友人を作る機会を買えたとしても、そこで実際に信頼できる友人を作ることはまた別の努力が必要になるからだ。

「高い学費を払ってなぜ大学にいくのか。社会の役にたたない事を学んでどうするのか」という批判はよくあるが、
「信頼のおける多様な友達たちを作るために大学へ行く」そしてそれができるのは今しかないのだから、というのが私の答えである。

視野を広くもって素晴らしく多様な出会いの数々を大学でみつけていって欲しいと思う。

コラムニスト GORILAX
大学院卒 学術修士。ふと、湧きだす好奇心から、いろんなセカイを巡るのが好き。実際に現地に足を運んで、海外のイベントや食、文化についてのコラムを執筆したり、国内の「面白いもの」について紹介していきます。

GORILAX
コラムニスト ふと湧きだす好奇心から、いろんなセカイを巡るのが好き。実際に現地に足を運んで、海外のイベントや食、文化についてのコラムを執筆したり、国内の「面白いもの」について紹介していきます。社会学、文化人類学の視点からもアプローチしていきます。