ビッグブラザーズとこれからの世界

かつてAppleはビッグブラザーを倒す側だった。
次の変革へ。

物価が上がるというニュースを最近良く目にする。
このコトについて批判的な見方をする人は少なくない。

しかし、物価が上がるということは批判的に見るべきではないと思う。
景気を見る方法の一つとして日経平均株価がある。この日経平均株価はあるものと同調していると言われている。
それが物価である。つまり、物価が上昇しなければ、日経平均も上昇していかない。または、日経平均が上昇するということは物価が上昇するということを意味する。
景気がよくなっていくということは物価が上昇するということなのだ。
日本は長い不況のあいだに物価が下がること、より安くいいものを得るということに重きをおいていたように感じる。
あまりにも長期的にそうした感覚が継続したため、それは「あたりまえ」のこととして、社会の中で共有された感覚なのかもしれない。

こうした感覚を見直すのは国内にいるだけではなかなか見えてこない。実際、私も物価上昇がもたらす価値を感覚として理解できたのは海外に出て消費行動を起こしたことがきっかけである。アジアにいくと最近は以前行ったときより、格段に物価が上がっていると感じることが多い。つまり、海外、私の場合はアジアに行ったのでアジアのことになるが、アジアでは確実に経済は成長し、景気良く物価は上昇している。そしてこの動きに日本だけがおいていかれている感がある。このことに私は危機感であったり、もはや日本が優位であるという状況ではないことへの諦めさえ沸き起こる。

いま日本の社会はGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が多くの市場を占めようとしている。一方で中国はBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)が市場を席巻している。中国の面白いところは、GAFAの参入を制限し、自国の会社が成長していったという点だ。日本も少し前までは「ガラパゴス化」という言葉がよく使用され、独自規格、独自製品、独自サービスで運営することがよく取り上げられたが、いまは完全にGAFAのパワーが強くなっている。世界の多様性が意識されるなかでICTのインフラサービスは数少ない数社によって占められようとしている点は非常に興味深い。

2005年にトーマス・フリードマンは『フラット化する社会』を出版し、世界の経済はITの進歩と中国、インドの経済成長が後押しし、同等な条件下で競争が行われるということを主張していた。しかしながらそれから14年たった、2019年の世界はどうだろうか。今思えば、2005年ごろは多くの可能性が模索され始めていたが、ITの世界は無法地帯で秩序が作られ始めていた黎明期であったのかもしれない。それが現在、多くの秩序が数社によって支配されるようになってきたのではないかと思う。これを良いことと捉えるか、問題であると捉えるか。アプローチの方法は状況により様々だが、今、世界がどのような状況へ向かおうとしているのか、もしくは向かいたいと思っているのかがよくわからないことになっているのではないか。ある種、ICTの発展スピードが加速して、それに対して多くの人がついていけていない状況すら見て取れる。私もよくわからない。

遡ること1984年、AppleはスーパーボールのCMを放映する。ジョージ・オーウェルの「1984年」をモチーフにビッグ・ブラザーを破壊しようするストーリー。もちろんAppleがビッグブラザーを倒す側として描いている。


それから35年後の2019年。
ビッグブラザー(ビッグブラザーはIBMであると言われている)を倒したappleは世界一の巨大な企業へと成長した。
ビッグブラザーが失脚後、アップルは新たな価値を提案し、ユートピアを創造したかに見えた。
思い起こせば、GAFAは既存のサービスやITをぶち壊す変革側のイメージをもった企業であったのではないかと思う。
ある種の変革をもたらすファクターは既存のシステムに問題意識を持っている人々に友好的に受け入れられる傾向がある。
GAFAはそうした意味において世界の多くの人に有効的に受け入れられてきた。
しかしながら、あまりにも成長しすぎて巨大化したものは猛威として受け入れられる側面もある。
現在がまさにそこの分岐点なのではないか。
かつてビッグブラザーを倒すCMを作成したAppleをはじめ、GAFAがビッグブラザーズとして世界へ君臨する世界は光り輝くものなのだろうか。それとも、ビッグブラザーズを倒す新たな存在がでてくるのだろうか。
なかなかおもしろいことになるかもしれないとワクワクしているのは私だけだろうか。

コラムニスト GORILAX
大学院卒 学術修士。ふと、湧きだす好奇心から、いろんなセカイを巡るのが好き。実際に現地に足を運んで、海外のイベントや食、文化についてのコラムを執筆したり、国内の「面白いもの」について紹介していきます。

GORILAX
コラムニスト ふと湧きだす好奇心から、いろんなセカイを巡るのが好き。実際に現地に足を運んで、海外のイベントや食、文化についてのコラムを執筆したり、国内の「面白いもの」について紹介していきます。社会学、文化人類学の視点からもアプローチしていきます。