80年代、胸を刺すようなドラマがあった!山田太一傑作選「想い出づくり。」BS12で5月13日夜7時からリバイバル放送開始。

「最近の日本のドラマは面白くない」という声をよく聞きます。
「テレビ全体の視聴率がどんどん下がっている」「若年層を中心に”テレビ離れ”が起きている」とも聞きます。

私の見解ですが、まず「若者層を中心にテレビ離れが起きる」この現象は、つくり手側が比較的テレビを見ている世代と言われる40代から上の層を狙って、キャスティングをしたり内容を考えたりしているからでは?往年のスターをそろえたり、やたら昭和の懐メロの特集をしたり….そんな番組に興味を持つ若者層はほんのわずかでしょう。そして、繰り返し放映される同じような番組に嫌気がさした層は、結局「今のテレビはつまらん」となって、若者以外の層も「テレビ離れ」を引き起こすことに。いつまでもトレンディドラマが大ヒットしていた頃が忘れられず、時代の動きを察知しないまま制作を続けている局もあるようにも思えます。
日本のドラマが面白くなくなったという声ーー。それはいつの時代も同じ。面白いものもあれば、そうではないものもある。現に現在放送されている「朝ドラ “なつぞら”」は高視聴率を獲得し、ストーリーに対しても高い評価を得ています。出演者の演技力も評判。ちゃんと面白いドラマは存在します。しかし、ストリーミング配信などで海外ドラマをみる機会が多くなった視聴者からすると、日本のドラマが物足りなくなるのも否定はできないところです。
SNSの出現で制作側が保守的になったことも要因かもしれません。視聴者すべてが評論家であり、番組への意見を外部に発信できる現在では、「批判を浴びないように」「不快感を与えないように」と制作側は考慮せざるを得ない。特に差別的な表現に対して、視聴者は敏感に反応します。しかし、差別的な表現こそリアリティの追求であったりもします。

70年代から80年代にかけて数々のヒットドラマを生み出した一人の脚本家がいました。脚本家:山田太一の作品は、社会の差別や矛盾を描き出すものが多かったように思います。例えば「ふぞろいの林檎たち」には、パワハラ、セクハラ、学歴、貧富、見た目、職業など….社会の中に普通に存在する差別に悩み、それでもどうにかして社会の中で生きていこうとする人々の姿が映し出されていました。観る人はそこに共感し、ドラマは社会的なヒットとなりました。山田太一独特のセリフの言い回しなど、視聴者を引き込んでいく表現手法も随所に散りばめられていました。リアリティであることだけがドラマではないですが、私たちが抱えている日常のストレスやフラストレーションと向き合う登場人物たちに自分を照らし合わせることもTVドラマの醍醐味と言えるでしょう。

全国無料放送のBS12 トゥエルビが、山田太一の代表作の一つ1981年に放送された「想い出づくり。」を5月13日からリバイバル放映します。
結婚適齢期(24歳)を迎えた3人の女性が、結婚までに何か想い出を作ろうと必死にもがき励む恋愛ドラマ。山田太一のオリジナル書き下ろし。主演は古手川祐子、田中裕子、森昌子の3人で、男性陣は古手川祐子の恋人役の柴田恭兵ら。平均視聴率15.2%(ビデオリサーチ 関東地区)。裏番組には、のちに国民的ドラマとなる「北の国から」が放送されていましたが、苦戦を強いられていたとか。

“おもしろいドラマ”、”見応えのあるドラマ”とは何か?
すぐれた脚本とはどんなドラマなのか?
きっとこの作品を見れば、わかるはずです。

「想い出づくり。」

■脚本:山田太一
■出演:森昌子、古手川祐子、田中裕子、柴田恭兵、佐藤慶、児玉清、谷口香、前田武彦、坂本スミ子、佐々木すみ江 ほか
■コピーライト:(C)TBS
■放送日時:5月13日(月)スタート (毎週月曜よる7時~8時50分(2話連続放送)全14話)
■番組HP:https://www.twellv.co.jp/event/omoide/

ライター:Jimmy

伊集院 遥
人生の移ろいを感じながら、風のように生き、雨のように歌い、太陽のように人を照らしたい。