タイの4月のマンゴーは最強!!

学生の時、東南アジアの研究者や先生方と会食をしたときに話のネタになったことが、
「いままで食べたもので一番おいしかったものはなにか」ということでした。
そこで、タイ研究うん十年の当時60歳オーバーの先生が、
「わしは、4月のタイで食べたマンゴーがやはり一番うまかった」と話していました。
他の研究者の方も、確かに4月のタイはめっちゃくちゃ暑いがマンゴーはうまい!と言い、盛り上がりました。

その先生が言うには4月のタイのマンゴーは他の月のマンゴーとは違い特別なものだそうです。
なにが特別かというと、マンゴーの旬は4月であるということです。
タイで年中マンゴーは取れているじゃないか。ほかの季節でも普通に生のマンゴーが売られているのを見る、と言う人がいると思いますが、実はそれにはちょっとした仕掛けがあるそうです。

それは、マンゴーの木にホルモン注射をして、季節を騙して、マンゴーを作っているので、旬の4月以外でもタイではマンゴーを収穫することができるとのことです。東南アジアきっての農業大国であるタイは技術革新を怠らず常によい商品を作り続けています。以前、タイの農村に調査に行った際、マンゴーの質を高めるために、宮崎県からマンゴー農家を招聘して、マンゴーづくりのノウハウを学んだりしていると聞きました。

また、他の野菜などでもいえることですが、タイは有機農法で育てた野菜が人気で、そうした方法で育てる農家が多いというのもタイ農業の性質の一つとして挙げられます。
実はタイは有機農法がやりやすい土地であるという点もあります。

このことがタイの川が濁っていて汚く見えることとも関連しています。
我々日本人から見れば、タイの川はどこも濁っていて汚く見えてしまいます。
日本の清流のように、透明できれいな川はないものかと思う人は多いのではないかと思います。
実はそこに、有機農法がやりやすい理由にも関係した性質があります。

タイは熱帯地域でとても暑い場所です。そのため有機物の発酵スピードがとても速く、様々なものがものすごいスピードで発酵をします。そして、その結果として大量のバクテリアが発生します。
タイの川が濁っているのは、この大量のバクテリアが発生していることが原因とのことです。
つまり、石鹸や家庭排水などで汚染され汚いから川の水が濁っているわけではないのです。
水の濁りはバクテリアによるものです。
これは生物や植物にとっては生活しやすい栄養価の高い水であると言えます。

このように、タイでは有機物がものすごいスピードで発酵します。そして、この発酵を利用し、肥料を作る方法こそが有機農法のベースとなっています。また、有機肥料の材料となる植物や果物も温暖な気候のためそこら中にあります。
有機農法に必要な有機肥料の材料とそれを発酵させる気候が抜群にいいため日本ではなにかと難しいとされている有機農法を多くの人が実践しやすいという性質があります。

話がそれたのでマンゴーに戻します。
つまり、多くの人がタイのマンゴーはホルモン注射をして、木を騙して作られたものと言うことです。
4月に採れるマンゴーこそが正真正銘のタイの夏にできたマンゴーであるということです。
だからこそ、4月のマンゴーは他の時期のマンゴーとは別格で味が濃厚で、とても甘いと言われています。
私がこの話を聞いたのは学生の時でした。そう、学生はかなり時間を自由に使えますが、4月は学年の始まりであるためその時期に海外に行くということはなかなか難しいのです。社会人になってもなかなか4月に海外旅行へ行ける機会がありませんでした。そして気がつけば10年以上の歳月が経っていました。

しかしながら、4月のマンゴーを食べたいという私の熱意は変わらず、あったんです。
そして、4月のタイに降り立ちました。
ホテルにチェックインをして、最初に購入したものはもちろんカットマンゴーです。
色がいつも目にするマンゴーと違います。ものすごく黄色が濃いです。
オレンジに近い濃い黄色です。
食べると口いっぱいにとてつもなく濃い果汁が溢れ出ました。
素晴らしい。こんな美味しいマンゴーは食べたことがありません。
インドのマンゴーも美味しいです。しかし、タイのマンゴーのほうが味が上品な感じがします。
そして濃厚。一度現地で4月の完熟マンゴーを食べてみるべきです。

ちなみにカットマンゴー以外にも、ジュースで提供してくれるところもあります。
激辛のタイ料理の後にはマンゴージュースでクールダウンするのが最高に気持ちいいです。

コラムニスト GORILAX
大学院卒 学術修士。ふと、湧きだす好奇心から、いろんなセカイを巡るのが好き。実際に現地に足を運んで、海外のイベントや食、文化についてのコラムを執筆したり、国内の「面白いもの」について紹介していきます。

GORILAX
コラムニスト ふと湧きだす好奇心から、いろんなセカイを巡るのが好き。実際に現地に足を運んで、海外のイベントや食、文化についてのコラムを執筆したり、国内の「面白いもの」について紹介していきます。社会学、文化人類学の視点からもアプローチしていきます。