1通の案内状

手の中にある試写室

9月に入った頃、1通のメールが届きました。
そこには「試写会のお知らせ」というタイトルが書かれていました。私は地方都市に住むwebライターです。この手の試写会の案内が来るたびに地方に住むことのデメリットを感じていました。しかも今はコロナ禍であり、試写会を開催するのは、いわゆる「感染流行地」と呼ばれる東京や大阪に行くには躊躇せざるを得ない時期でもあります。ですから新作映画の紹介を書くときは、配給会社から宣伝用の詳しい映画資料やトレーラー映像などが届くので、試写会に参加できなくとも半分観たような気持ちで紹介文を書いています。
しかし、この日届いた試写会のお知らせのメールには、見慣れない言葉が並んでいました。

「オンライン試写のご案内をさせていただきます」

私は、思わずニンマリしました。これはコロナのおかげではないか!

私のように地方にいながらもwebマガジンや雑誌などに映画紹介をしている人は多いと思います。都会優先の試写会に不満を抱えているライターも少なくありません。でもオンラインなら、地方にいても海外にいても試写会に参加できるわけです。

オンライン試写会は、案内のメールに試写会参加の有無を返信するところから始まります。
翌日には、プレビュー開始ボタンが添付されたメールが届きました。

なんとうれしい”ボタン”なのでしょうか!

クリックすると、リアルタイムに試聴用のパスワードが送られてきました。

運営しているのは映像関連で有名な「IMAGICA」の名前が掲載されていました。なるほど、この会社がオンライン試写会を仕切っているんだと思いながら、再生ボタンをクリックし、パスワードを打ち込むと、PCの画面に試写室が現れたではないですか!なんとも夢のような気分です。
映像が映し出されると、右上に大きな文字でしっかりと「SAMPLE」と固定のクレジットが書かれていました。

ブラックミュージックの原点「MOTOWN」

関連ページ mighking-of-motown-released-on-september-18-kim

映画は「メイキング・オブ・モータウン」。9月16日からヒューマントラストシネマ渋谷から順次全国で上映される作品です。
黒人差別が横行していたアメリカで、黒人たちが音楽を楽しみ、音楽を発信していくために生まれたレコード会社『MOTOWN』。その創設から、数々のスターとヒット曲を生み出しながら変貌していく様を創設者のベリー・ゴーディと相棒とも呼べるブラックミュージック界の大御所スモーキー・ロビンを通して語られていくドキュメンタリー映画です。
今のブラックミュージックというか、今のアメリカのポップスの原点が描かれています。所属していたミュージシャンは数知れず、黒人初のグループとしてテレビに出演したスプリームス(メンバーのダイアナ・ロスはベリーと結ばれ、ソロとしてスーパースターに昇り詰めます)や、ソウルミュージックに功績を残したテンプテーションズ(1989年ロックの殿堂入りを果たしました)、黒人差別や社会問題を歌に託したマーヴィン・ゲイ(代表曲は「What’s Going On」今も歌い継がれる名曲です)、誰もが知る盲目のミュージシャン スティーヴィー・ワンダー(グラミー賞を受賞するなど、最も受賞回数の多い男性ソロ・シンガー)、そしてマイケル・ジャクソンを世界に放ったジャクソン・ファイヴ(ディスコミュージックを通して黒人のみならず人種に関係なく数々のヒット曲を出しました)。

60年という歴史の中で、ブラックミュージックがどのように移り変わっていったのかがわかる作品です。当時、音楽を通して人種や世界を一つにした「MOTOWN」の功績はどれほど大きかったことでしょうか。現在、コロナと共にアメリカに蔓延り続ける黒人差別問題が大きく取り出されています。この映画がきっかけに再び世界がひとつになれたらと、願うばかりです。

「メイキング・オブ・モータウン」
監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー 出演:ベリー・ゴーディ、スモーキー・ロビンソン 2019/カラー/5.1ch/アメリカ、イギリス/ビスタ/112分/
原題: Hitsville: The Making of Motown/字幕翻訳:石田泰子 監修:林剛
配給:ショウゲート
公式サイト:makingofmotown.com
©2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved

オンライン試写会を通して、こんな素晴らしい映画にめぐり会えたことに感謝です。コロナがもたらしてくれた恩恵なのかもしれませんが、こうした試みが、ごく普通に浸透していけば、私たちはどこにいようとも仕事ができ、そして社会と繋がっていけるような気がします。

column  by  JIMMY

JIMMY
人生の移ろいを感じながら、風のように生き、雨のように歌い、太陽のように人を照らしたい。