話題のVISONに行ってきた
三重県に日本最大級の商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」(三重県多気町)ができた。
サイトを見れば分かる通り、かなり「オシャレ」なつくりになっている。
フランス料理人である手島竜司氏のプロデュースによるようだ。(https://vison.jp/article/?id=295)
移動が大変、遊び方がわからない
まだまだ夏真っ盛りの平日にこのVISONへ行ってきた。平日にもかかわらず、多くの人が来ているようだった。
それにしても、おしゃれな外観の建物が並んでいるが、どの建物が何なのかよくわからない。
もしかすると、それぞれの建物に行って何があるのかを回遊して楽しむのかコンセプトにあるのかもしれない。
だが、建物が立ち並ぶ場所は高低差があり、段差や階段が多い。舗装されていない吹きざらしのような道もあるので移動はかなりハードモードだ。
おまけに降り注ぐ直射日光はあっという間に体力を奪っていく。
要は、店をまわるどころではなかった。とにかく暑い。しかも高低差の激しいところを行き来するわけなので、とてつもなくしんどい。
しかも案内版も、案内所も皆無なので、どこをどの様にまわって楽しめばよいかわからないし。楽しみ方を自分たちで精査することも出来ない。
かなりのアソビレベルを要する場所だった。
店舗もいわゆる「オシャレ」と言われているようなところが出店しているが、だからといって目新しいもの、わざわざ店内に入って見ようと思うようなものは少なかったように感じる。暑さでそうしたところを観てまわりたいという気持ちが起こらなかったこともあると思う。
最高なランチをいただく、ただし接客は…
ランチを食べようと入ったお店はバスク料理のお店だった。
正直、どの様に料理をオーダーすればいいのかよくわからなかった。店員は注文の方法を教えてくれなかったので、生まれて始めてスターバックスでオーダーしたときのような疎外感を受けた。「え?なに?注文の仕方わかんないの?一応それなりのオシャレなお店だからそういうのちょっと困るんだけど。」という空気が立ち込めるのだった(笑)。
ピンチョスという一口サイズの料理を数ある中から選ぶスタイルだったが、個々の料理の説明もしてくれないのでよくわからなかった。店内は混雑しているわけではなく、客は私たちだけであったのに、なにも教えてくれない店員に好意的な感情を抱くわけがなかった。ここらへんに住んでいる地元の人なのだろうか。接客には愛想がないし、どことなくガサツ。商品知識も大してなさそうだ。
こうした人にわざわざ細かい質問をしてしまうと、困らせてしまうのが関の山なのであまり内容について聞くのはよそうと思った。
しかしながら、出てきた料理は絶品だった。初めてバスク料理を食べたがこんなに美味しいものなのかと思った。デザートのバスク風チーズケーキもチーズの酸味や濃くが焦げの苦味と相まって最高だった。こんなに素晴らしい料理を提供するお店なのに、接客する人のレベルが低いのは大変残念だった。
リゾートと自称している場所にあるお店なのに、サービスを提供する人にリゾートを感じさせてくれる感覚が欠如しているのは至極残念なことであるが、地方では「あるある」なことであると思う。レベルの高いサービスを受けたことがなかったり、レベルの高いサービスについて学んでこなかった人しか雇うことが出来なかったのだ。特にこんな山間の場所でわざわざ働いてくれる人となるとしょうがないことであるとは思う。
絶対食べてほしいソフトクリーム、ただし、提供する人は…
その後、パン屋で売っているソフトクリームを買ったのだが、がっかり体験はつづく。
ソフトクリームが詐欺みたいで少ないのである。
表の看板に載っている写真にには3うねり以上が積み重なっているに実際に提供されたのは1ひねりとちょっと。思わず、クレームを言うべきか悩んだが、あまりの暑さでバテていたので言う気にもならなかった。なるほど、舗装されていないボロボロ道と直射日光と高低差ありまくりの悪路で体力を奪い、思考を鈍らせることで不満を和らげ、クレームを回避する作戦だったのかもしれない。すごい戦略だ。
3うねりはあるソフトクリームの看板はこちら カイロの食べある記
http://mycmyc.blog.fc2.com/blog-entry-1960.html
だが、ここも、ものすごく美味いソフトクリームだった。さすがパティシエ辻口博啓氏が手掛けたソフトクリームだけはある。かなりの絶品である。ここに来たら是非食べるべきものだと思う。だが、そのソフトクリームを提供してくれる人材のレベルはひどい。良い製品を良い環境で、ここの場合はリゾートという場所で感動を提供するべきはずなのにレベルの低いソフトクリームの提供をしてきた現地店員が憎い。
建物はオシャレだし提供される料理やスイーツの味のレベルは高い。
建物はオシャレだし提供される料理やスイーツの味のレベルは高い。
しかし、それを提供する人のレベルはそこに追いついていない。むしろ、ギャップがありすぎて滑稽にもみえる。
そして、ここでの観光体験は陳腐なものへとなってしまう。とても残念なことだなと思う。
リゾート地ではない地方で新たにリゾートを運営することの難しさともどかしさ
とても難しいことに挑戦しているのだろうと思う。
そもそも、洗練されたオシャレやリゾート感というのは「都市の」文化や感性が起点となっている。よってそれを経験的に知ったり、身につけているいる人は都市の人であることが多い。多くの地方の人はそうしたものがよくわからない。こうした「都市の」文化や感性はテキスト化されたものや動画によって理解できるようなものではなく、経験的に、感覚的に習得していくものであると思う。表面をなぞるだけでは到底、習得困難である。
リゾート的なものは都市のもの
リゾート的なものはこうした「都市の」文化や感性に所属するものであるからこそ、それを提供する側にも「都市の」文化や感性を理解していることが重要になってくると思う。しかし、それを地方に住んでいる人に求めるのは酷なことであると思う。こうした仕事の大部分は非正規の低賃金労働者が担うことが多い。なかなかハードルが高いと思う。人材を安いコストで使い回すことがベースにある以上、地方で都市と同等レベルの接客サービスを提供することは出来ないと思っている。そもそも、都市のものを輸入して、都市の文化や感性に沿ったものを低賃金労働者にさせることが地方活性化においてどれだけの利点になるのだろうか。雇用は増えるだろう。しかし、その雇用の質は、地域をより豊かにするためのものとしてあるのだろうか。「昔からリゾート地としてある地方」なら、まだ「リゾート地」としての意識があるため話は別のなのかもしれないが、リゾート地としては未経験の地方では厳しい選択だと思う。
VISONの今後に注目したい
「オシャレ」や「洗練性」はなくとも、その土地独自の文化や風土、粗野な感じのなかにある雑多で奥行きのある人とモノの方が独自性があり面白いと思う。そしてそこに地方の生き残りをかけた持続可能な戦略があるのではないかとも思う。
VISONはコンセプトとしては面白い。しかし、リゾートとして成立させるための人材と意識が不足しているのではないかと思う。この点について改善がみられなければ早いうちに淘汰されてしまう可能性は高いだろう。