日本人初の快挙!王谷晶『ババヤガの夜』がダガー賞〈翻訳部門〉受賞


「ダガー賞」は1955年創設、英国推理作家協会(CWA)が主催する、ミステリー/犯罪小説に贈られる文学賞。翻訳部門は、英国で出版された、英語翻訳作品に対して授与される

英国推理作家協会(CWA)が主催する世界的なミステリー文学賞「ダガー賞」の翻訳部門にて、王谷晶『ババヤガの夜』(英題:The Night of Baba Yaga、訳:サム・ベット)が受賞を果たしました。日本時間2025年7月4日(金)早朝の発表で明らかになったもので、日本人作家としては初の受賞、さらにアジアの作家としても史上2人目となる歴史的な快挙です。
1955年に創設されたダガー賞は、ミステリー・犯罪小説を対象とした英国最高峰の文学賞。中でも翻訳部門(Dagger for Crime Fiction in Translation)は、英語以外の言語で書かれ、英国で英訳出版された作品に贈られるもので、作品と翻訳の双方に高い評価が求められます。選考委員には、マキシム・ヤクボウスキー(委員長)をはじめ、ニック・パーカー、メギー・ルッセル、サイモン・カート・アンスワース、サラ・ワードの5名が名を連ねます。

世界が注目する日本ミステリー
これまでにも横山秀夫『64(ロクヨン)』(2016年)、東野圭吾『新参者』(2019年)、伊坂幸太郎『マリアビートル』(2022年)が同部門の最終候補に選出されてきましたが、受賞には至らず。今回、『ババヤガの夜』は柚木麻子『BUTTER』(訳:ポリー・バートン)とともにダブルノミネートされ、日本から2作品が候補入りするのも初の出来事でした。
『ババヤガの夜』の英訳は、翻訳家サム・ベットによるもので、英国Faber & Faberより2024年9月に刊行。重厚な物語と詩的な文体、そして翻訳の緻密さが評価され、今回の受賞に至りました。世界が注目する新たな日本ミステリーの扉が、いま大きく開かれようとしています。

王谷晶『ババヤガの夜』
本作は、2020年「文藝」秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」にて全文発表され、同年10月に単行本化、2023年5月に文庫化されました。
喧嘩しか取り柄のない新道依子は、ある日、関東有数の暴力団の屋敷に連れてこられ、組長の一人娘である短大生の送り迎えと護衛を命じられる。気の合わないふたりの奇妙な同居生活のなかで、依子はこの家に隠された、ある秘密に触れていく。
物語終盤で明かされる大胆不敵な大仕掛け。繊細かつ哀切に描かれる、女と女の名前のつけられない関係――
一気読みの直後、二度読み必至。ラストで明かされる衝撃の仕掛けとは?
圧巻のシスター・バイオレンス・アクション!


「ダガー賞」授賞式での王谷晶さんスピーチ全文

まずは審査員の皆さん、この国で私の本を出版してくださったFaber&Faber、アメリカで最初の英語版を出してくれたSoho Press、タトル・モリ エイジェンシー、印刷製本、流通、販売してくださった皆さん、そしてこの本を手に取って大切な時間を使ってくれた読者の皆さんに大きな感謝を捧げます。

今は、とにかく驚いています。完全に混乱しています。「モンティ・パイソン」のスケッチに出ている気分です。昨夜は「フォルティ・タワーズ」みたいな素敵なホテルに泊まりましたし。何より感謝したいのは、翻訳のサム・ベットさんです。この本は日本のローカルな要素がたくさんあります。サムさんはそういった作品の細やかな部分をひとつひとつ大切にしてくれて、そのうえで素晴らしい英訳を作り上げてくれました。本当にありがとうございます。私はミステリ専門の作家ではありません。様々な種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています。曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。この作品の主人公たちも、はっきりとラベリングできない関係と人生を手に入れます。これは何よりも私が読みたかった要素です。同時にこれはバイオレンス満載の物語でもあります。ここにお集まりの皆さんは私と同じく血や殺人や犯罪や、復讐や暴力が大好きな方々だと思います。もちろんフィクションの。私はバイオレンスフィクションの愛好家ほど、よりさらに現実世界の平和を願い行動しなければいけないと思っています。リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。歴史が物語っています。これからも首無し死体やパーティでの毒殺を楽しむためにも、今回頂いた栄誉を、世界の平和のために少しでも役立てたいと思います。

Thank you


 


河出文庫『ババヤガの夜』

著者:王谷晶
仕様:文庫判/並製/208ページ
初版発売日:2023年5月9日
税込定価:748円(本体価格680円)
ISBN:9784309419657
装画:寺田克也
解説:深町秋生
出版社:河出書房新社
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309419657/
※電子書籍も発売中です。詳細は各電子書籍ストアでご確認ください。

本文ためし読み
https://web.kawade.co.jp/tameshiyomi/126559/

王谷 晶 Akira Otani
1981年、東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』『ババヤガの夜』『君の六月は凍る』『他人屋のゆうれい』『父の回数』、エッセイ集『カラダは私の何なんだ?』『40歳だけど大人になりたい』などがある。

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