「もう、リアルする必要もない!」ゲイの出会い系アプリの進化 Blued

「リアルする」ということが重要であるという意識
2020年、日本国内でゲイ雑誌がすべて廃刊なる。ゲイの出会いと交流の場が誌面から、ネットへ移行し、出会い系ゲイアプリが台頭して10年以上が経った。
2009年にiPhoneのアプリとして登場した「黄色い」ゲイ出会い系アプリは多くのゲイをiPhoneユーザーへと駆り立てたのは懐かしい。
その後、日本発の出会い系ゲイアプリ「ピンク色」が支持を集め今に至るがそれまでの出会い系ゲイアプリにおいて重要なこととして、「実際に会う」ということがあった。
出会い系のアプリであるため当たり前である。GPS機能で近くにいるタイプの人を探し出し、会う(リアル)するということが多くの出会い系アプリにおいての基本的な使用方法だった。

アプリ疲れとコロナショックによるパラダイムシフト
この「いい人」を探して、マッチングし、メールでやり取りをして、実際に出会う。という流れはうまくいけば良い出会いをもたらすのだが、多くのユーザーはこうしたフローでタイプの人を探すということにだんだん疲れてくる。いわゆる「SNS疲れ」にも似たもので、人とガッツリやりとりをすることに疲れる。リアルな出会いを目標とし手間を割き、実際に会うということが次第にめんどくさくなる人もいるようだ。

2020年になり新型コロナウィルスの被害により、自宅で自粛生活をすることが広く求められるようになった。今までのように、アプリで気軽に出会い、交流することが憚れるようになった。
つまり今まで通り、出会い系のゲイアプリを通して誰かと出会うということが面白くないものになってしまった。今までの出会い方と交流方法が陳腐化してしまったとも言える。

出会いも交流もオンラインでキラキラしてるzoom飲み会
そうした中で広がりを見せているのがzoom飲み会といったものである。オンラインで友人同士で繋がり飲み会をするといったものである。リアルで会うのではなく、オンライン上で時間を共有するというところが重要になってきたということだ。しかしながらzoom飲み会は、すでに知っている人同士が繋がり合い、交流していることが多いと思われる。そのため、新たな出会いを求めた人にとってはそこまで魅力的ではないかもしれない。また、そもそも、そうしたzoom飲み会をしてくれる友人がいるのであればいいが、そうした人がまだいない人もいる。私が思うに、実はzoom飲み会はある意味ハードルは高い。
今までにある程度の交流関係が形成されていなければなかなかzoom飲み会の輪に入ることはできないのではないかと思う。ゲイバーやゲイナイトでのつながり、ツイッターやInstagramでのつながり、こうしたものでのつながりが希薄、もしくは、最近デビューした人にとっては敷居が高い。
ゲイのzoom飲み会に参加したいけど、そうした友人がいないという人は意外と多いと思う。そうした人は今まで以上に取り残されてしまうのだろうか。

青いアプリBluedがやってきた
おそらく、そうした「おうちで自粛状態」で退屈な日々を過ごしている人にとって「新しい出会い」を育むアプリとしてBluedという「青い」アプリは今後の注目度が高いのではないかと思われる。
Bluedは他のアプリ同様にGPSを使用した出会い系アプリとしての機能を持ちながらも、「ライブ配信」のサービスに力を入れているゲイアプリだ。アプリの規模としては世界一の規模を誇っているといわれている。
そのため、資本的、技術的なレベルが高く、交流方法についての種類や機能が充実している。そして、この「青い」アプリはいま出会い系ゲイアプリの価値観を変えようとしている。

リアルのプレッシャーからオンラインのリラックスへ
今までのゲイアプリは実際に会ってリアルをするということに1つのゴールが置かれていた。実際に会う人を探すためのアプリであったわけである。
Bluedはその価値を変貌させた。
「もう、リアルするということに縛られなくてもいい。オンラインで出会って交流をすればいいじゃないか」
これがBluedが提案している新たな価値なのではないかと思う。
おそらく、多くのアプリがそうしたことを望んだ一方で、それを実現するための資本力と技術力を確保するの苦労したという背景があると私は思う。そういう機能があればいいがそこまでのコストを払ってまではできないという状況だったのではないだろうか。

また、以前の社会の感覚として、実際にあって交流するということが何よりも上位にあった。
この社会の感覚が変貌し、「実際に会う」ということの優先度が下がってしまったことがオンライン上での交流を後押ししている。
もちろん、このオンライ上の交流を志向する流れにうまく乗れているゲイアプリはおそらくBluedだけなのではないかと思う。

では、なぜ、ライブ配信が新たな出会い系の潮流として優れているのかということだが、そもそもライブ配信は「リアルでの出会い」というものを重視したものではないということだ。
先程指摘した、リアルでの出会いをすることに疲れた人にとってちょうど良い程度でコミットできる。
実際に会って交流するわけではない。ある意味、ライブを垂れ流していけばよい。そこからゆるい形で交流が生まれ、関係性が形成されていく。たとえ、関係性が深くなったとしも実際に会う必要はない。
オンライン上のみで出会いも交流も完結してよいのだ。こうした点においてライブ配信は新たな方法として可能性を持っている。

zoom飲み会といった今までに築いた関係性のなかでするオンラインの交流に入り込めていない人こそライブ配信が優れているというのはそのためだ。
ゆるくライブ配信をする中で、自分に合う人を見つけることができる。ライブ配信を続けていく中で次第にオンラインでの交流をする友人を作ることができるからだ。
しかもゲイアプリのため、同じセクシュアリティの知り合いを増やすことができるため目的意識も高くなる。

アプリで世界留学!?
さらに、Bluedは全世界向けのアプリのため外国人との出会いも多い。外国語の勉強や、文化を知る機会に恵まれている点も他には無い利点だ。
ライブ配信の場合、配信者は話すが、聞いている人はコメントで交流をする。音声同士の交流の場合だと、リスニング力がかなり必要であったり、訛った英語などに苦労して疲れてしまうことがある。
しかし、ライブ配信はリスナーとの交流はテキストでのコメント方式のため、わからなければ翻訳したものを見ることで理解できる。そして回答は自分で発言することになるのでアウトプットの練習になる。
わからなければ翻訳サイトで調べて発言すればよいし、他のリスナーが訳してくれたり、どういうふうに言えばよいかを教えてくれたりする。
生きた言葉を学ぶことができるので外国語の勉強にももってこいなアプリなのである。

さいごに
コロナショックは人との出会いや交流方法に影響を与えた。これは世界規模で起こった一つのパラダイム・シフトであると思う。
この価値基準の変貌のなかで従来どおりの価値にしがみついて凋落する人もいるかもしれないし、あたらしい価値を見出して成功を掴む人もいるかもしれない。
世界はどのような方向へ進むのかまだ誰にもわからない。しかしながら「セカイのありよう」は自分次第で赤くもなれば青くもなる。
セカイがどのような色に輝くのかをみつめ、動き出すことが今後の生き方に求められるのではないかと思う。