QS Quacquarelli Symonds社(QS)が作成し、世界で最も閲覧されている世界大学ランキングの最新版によれば、高等教育セクターの国際化に向けた日本の大学の試みは、ランキングの結果としてその成果を表すには至っていません。本日発表された第16回QS 世界大学ランキング2020では、ランクインした日本の41大学のうち、24校が順位を落としました。また、研究パフォーマンスにおける上位100位以内に日本の大学が入らなかったのは初めてのことです。
高等教育のグローバルコンサルティング企業であるQS作成の本ランキングは、世界の大学の上位1000位までを網羅したもので、マサチューセッツ工科大学は8年連続世界1位という新記録を樹立しました。日本の最上位は東京大学で、23位から22位へと過去最高の順位に上げています。
日本政府が推進する「留学生30万人計画」[1] は順調に進んでいるものの、世界における教育の国際化のスピードは日本以上に速いことが浮き彫りになりました。QSがランキングにまとめた世界の1002大学で学ぶ2329万人の学生のうち、286万人が留学生です(8名に1名、または12.27%)。日本では、ランクインした41校において、留学生は7.79%(13人に1人)に留まっています。
[1] この計画は、2020年までに30万人の留学生を日本の高等教育機関に招くことを目指すもの。この文書の執筆の時点で、日本における留学生の数は 約29万9000人。
日本の大学に関する注目事項
・東京大学は4年連続で順位を上げている。2015年は31位で、最新の順位は当時と比較して9ランク上昇した。
・東京大学は、引き続き世界で最も高い評価を得ている学術機関のひとつとして認められている。QSのAcademic Reputation(学術評判)指標で100/100の満点を獲得した。Academic Reputation(学術評判)で満点を達成した世界の8校のうちのひとつであり、アジアでは唯一である。
・京都大学も4年連続で順位が向上。2015年以降、36位から33位に上昇した。
・QSが調査した雇用者向け調査の回答において、日本の大学の卒業生ついての肯定的意見は減少した。ランクインした日本の41校のうち、35校でQSのEmployer Reputation(雇用者評判)指標のランクを落とした。
・また、世界の競争相手に対し、日本の大学は研究パフォーマンスの向上と国際化にも遅れを取っている。日本の41校のうち33校で、QSの研究効果の指標であるCitations per Faculty(教員1人当たりの被引用数)のスコアが低下した。
・日本の41校のうち、32校がInternational Student Ratio(留学生比率)のランクを落とし、34校でInternational Faculty Ratio(外国人教員比率)のスコアが低下した。
QSの調査部門長であるBen Sowterは次のように述べています。「この10年間、日本の大学はより多くの留学生を招くことができるようになりました。これは、日本に相当な経済的メリットをもたらし、世界から見た日本の立ち位置を高めることができる、有意義で肯定的な傾向と言えます。しかし、競合する多くの国が、高等教育セクターの国際化の速度において日本より優っている状況です。」
続けて、Sowterは次のように説明しました。「研究のための資金調達にも同様の原理が働いています。日本の高等教育セクターは今も10年間にわたる研究資金調達の停滞の影響を受けています。中国、シンガポール、韓国の高等教育界が国から集中的な奨励プログラムによって(資金的)恩恵を受ける一方で、日本の大学は同様の研究開発投資を受けておらず、よって、日本が研究大学の上位100位までにランクインしなかったことは想定内のことでもあります。この傾向は当社のScopus研究データベースに公開された論文の相対的シェアにも表れています。日本のシェアは2017年の4.2%から2019年の3.9%に低下しています。」
ランキング手法
ランキングの作成にあたり、QSは以下6つの指標を使用しています。
1.Academic Reputation(学術評判): 学術研究者9万4000人の回答に基づくもの。
2.Employer Reputation(雇用者評判): 企業側雇用者4万4000人の回答に基づくもの。主に優秀な卒業生を輩出している大学と企業が評価するもの。
3.Citations per Faculty(教員1人当たりの被引用数): 研究の反響を測定する指標であり、5年間の間に各大学の研究論文が引用された件数を、機関の教員数で割ったもの。
4.Faculty/Student Ratio(教員数対学生数比率): 教育能力を示す指標。学生数を教員の数で割って計算。世界の学生に対し、それぞれの教育機関でのクラスのおおよその規模を示唆するもの。
5.International Faculty Ratio(外国人教員比率): QSの2つの国際化指標のうちのひとつであり、国内外から赴任している教員の比率を示す。
6.International Student Ratio(留学生比率): QSの2つ目の国際化指標であり、海外から機関に就学している学生の比率を示す。逆に見ると、この指標は大学が才能ある学生を世界中から集める能力を示唆する。
ランキングのフルバージョンは下記リンク(UTC協定世界時6月19日水00:01以降)より閲覧可能です
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QSユニバーシティランキング – QS World University Ranking
2004年に初のQS 世界大学ランキングを発行して以降、QS Quacquarelli Symondsは大学ランキングを毎年公表し、大学の実績に関する比較データを提供する、世界で最も人気のあるソースへと成長しました。2018年には、QSのテーマ別ランキング表は3700万回以上の閲覧数を誇り、ランキング表全体の閲覧数は7300万回以上に上ります。
このプロジェクトには発足以来、以下が追加されました。5つの地域ランキング、QS Best Student Cities(学園都市)ランキング、専門領域別ランキング、QS Higher Education System Strength Ranking(高等教育システム強度ランキング)、QS Graduate Employability Ranking(卒業生雇用適性ランキング)。QSの調査は世界中のメディアで取り上げられています。2018年にはQSに関する5万本を超える記事がメディアで紹介されました。
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脚注:QS側にて世界大学ランキング結果の統計及び主要機関への配布後、早稲田大学より、提出済みデータの一部(教員数カウント)における誤りがあった旨報告がありました。この誤りは、早稲田大学のFaculty/Student Ratio(教員数対学生数比率)の指標にプラスの影響を及ぼし、一方でInternational Faculty Ratio(外国人教員比率)の指標にマイナスの影響を及ぼし、結果的にテーブル全体での位置に影響を及ぼすことになりました。QS Intelligence Unitは各大学から提出されたデータを注意深く精査しておりますが、今般の早稲田大学の教員数における誤りは、弊社が対前年比データで判別できるほど差異の大きいものではなかったため、早稲田大学からQSへ連絡があるまで、本事象について認識することが出来ませんでした。早稲田大学及びQSはそれぞれ適切な措置を取ることに最善を尽くした上で、今回のエラーにより早稲田大学の前年比で順位が上がることを認識するものとします。本エラーは修正され、今後のランキングは正しい数値(202位)を反映したものとなります。
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