【わたしの散歩道vol.2】時間のポートレート

もう一度、カメラをはじめた理由。

また写真を撮ろうと思った。

これまで何度かカメラに挑戦したことがあった。参考書や雑誌などを頼りに一眼レフを触り、もっといい写真が撮りたいと望み、カメラも3台買い換えた。

しかし3年ほど前にあきらめた。

なぜあきらめたかというと、なかなか上手くならなかったことと、撮る必要性がなくなったから。
上手くならなかったことに関しては、自分の技量のなさを認識したからなので仕方ないことである。
私はフライヤーやポスターのデザインを時々している。主にイベント用のものがほとんどで、デザインと同時に掲載用の出演者の写真も自分が撮ることが多かった。しかし、デザインをしているうちに、いつの間にか周りに何かを作りたい意欲を持ちクリエイティブに興味がある人たちが集まってきた。その中には、オリジナルの楽曲を作る人、イラストを描く人、そして写真を撮る人もいた。そんな周りの仲間たちの関係が、私から「写真を撮る必要性」を消し去っていった。
そして気づいたのは、私はいい写真が撮りたいわけではなく、いいデザインがしたいということ。ならば、いい写真を撮ってくれる人とリンクしていることが重要だと思ったのだ。うれしいことに、今、私の周りはさまざまな才能を持った人たちがいっぱいいる。この人たちの作品に刺激をもらいながら、私もデザインの分野を楽しめるようになった。

かくして、私は写真を撮ることをやめた。

しかし、今年、予期せぬ環境に身を置かねばならなくなった。

「新型コロナウイルス」のパンデミックである。

感染力の高いこのウイルスは人との距離と大きな関わりがある。人から人へうつりながら、世界中を蝕んでいった。政府やウイルスの専門家たちは、人との距離について厳しく言及した。会話をするな、一緒に食事をするな、マスクをしろ、スキンシップは禁止、2m以上離れなさい。
そして、このウイルスは、特に高齢者や慢性疾患を持つ人に悪さをする。

今では、誰もが感染してもおかしくない状況に陥っている。

「ステイホーム」家にいろと言う。「ソーシャルディスタンス」人とは距離をとりなさいと言う。

このような状況の中では、当然、一人の時間が多くなってくる。

家で料理を始めた人、DIYを始めた人、ガーデンニングに興じる人、ペットを飼い始めた人…。
みんな一人で楽しむ方法を探し出した。
私が、もう一度写真を撮ってみようと思ったのも、まさしくそれだ。
中年の年齢であり、慢性疾患を持つ自分としては、もしもコロナに侵されたら、きっと軽症ではすまないだろうと自覚している。そんなことを考えていたら、大袈裟だが「自分の生きている証を残していこう」と漠然と思い、iPhoneで写真は撮っているものの、もっといい写真で残していきたいとなんとなく思ってたら、カメラの中古サイトで昔欲しかったけど高くて買えなかった機種を見つけ、「もうこれは、コレを買って、カメラをもう一度楽しんでみるしかない」と、ポチッとしてしまった。
昔あきらめたことをもう一度やってみようと思わせてくれたのは、この強制的に変えられてしまった環境のおかげである。

今度は、必要性ではなく娯楽性で、カメラを楽しんでみようと思う。
日常や感動した風景と時間も一緒にファインダーにおさめていきたい。

上手くならなくていい。でも上手くなれたらうれしい。そして楽しみたい。

撮影:Fujifilm X30
written by JIMMY

伊集院 遥
人生の移ろいを感じながら、風のように生き、雨のように歌い、太陽のように人を照らしたい。